ことの十分を求めるな


   凡ての事、十分によからん事を求むれば、わが心のわづらひとなりて楽なし。禍も是よりおこる。又人の我に十分によからん事を求めて、人のたらざるをいかりとがむれば、心のわずらいとなる。又、日用の飲食・衣服・器物・家居・草木の品々も、皆美を好むべからず。いささかよければ事たりぬ。十分によからん事を好むべからず。是皆わが気を養う工夫なり。


   [楽水の註]

   流石に益軒先生だと感心の外はない。つまり、完全主義は自分の心の負担となってストレスを生ずる元となるから良くないと言い、また、人を使うにしても相手に完全を求めてはそれは無理というモノである。
 飲食をはじめ衣服・器物・住居・草木を愛でることにおいてさえ更に良いモノ更に良いモノと求めるのは良くないと戒めている。そうなると貪りの心とでも言うべきであろう。完全主義、貪りの心、ともに深く戒めねばならないと思う。