平成19年12月28日(金曜)、雨、暖かいがこれから寒くなると言う



   今日は7時に起床した。朝食の後、偶然にもヴェートーベンの第九を聞くことができた。



    音楽については、流行歌にしろ楽曲にしろその曲については、各人各様の特別な思いがあると言えるであろう。そうした意味で、この第九には私には私なりの特別な思いがある。



    それは、もういまから50数年も前のことになるのだが、その年の秋、私は長男を自家中毒で亡くした。僅か2歳であった。傷心の私は自分自身も末梢神経麻痺と言う奇妙な病となり、突然に陥る無力感、全身の虚脱感で体さえ動かせなくなると言う奇病に陥って苦しんでいた。


    そんなとき、当時やっとはやりだしていた、LPのHiFi 装置を自作して持っていた私の唯一の慰めはLPを聞くことであった。なけなしの小遣いを貯めてLP(当時、1枚 \3000 円)その数少ないLPのなかに第9があったのである。


    私はこの第9を聞きに聞いた。これを聞いていると元気になれるように感じた。虚脱感に襲われると立ち上がる事さえ困難であったが、机にもたれかかって立ち上がり、机伝いにLPに近づくのである。そして第9をかけるとそのままドタリと部屋に寝ころぶのである。寝ながら、じっと耳だけを傾け音楽に聞き入る。それは不思議な生きる喜びを感じさせてくれた。


    いつしか脱力感が薄れ、起きあがることができるようになるのに初めのうちは2−3時間、次第にそうした発作の間隔が長くなるのと裏腹に発作の時間も次第に短くなったように思う。


    そのような事を3−4年も経過した頃に長女に恵まれ、そしていつしかそうした発作も起きなくなった。すっかり恢復するまでに5年ぐらいも要したであろうか。そういう思いがあるのがこの第9なのである。


    今朝偶然に聞いた第九で私はすっかり良い気分になっている。下記にNHK今週の番組からの抜粋を記しておこう。


    師走の日本の風物詩、ベートーベンの「第9」。今年もNHK交響楽団による演奏をお届けする。指揮は現在ノルウェーのベルゲン・フィル首席指揮者などを務めるアンドリュー・リットン。ソリストのうちソプラノとメゾ・ソプラノがドイツ・シュツットガルト歌劇場で活躍中の日本人2人、テノールバリトンが韓国人の2人。ソプラノの角田祐子は関西出身、ベルリンで学び2002年にフランスでデビューした。メゾ・ソプラノの石津なをみは浜松市出身、国内外のコンクールで入賞。テノールのカン・ヨゼプはソウル、ベルリンで学んだ。当たり役は「セビリアの理髪師」のアルマヴィーヴァ伯爵。バリトンキム・テヒョンは多くの国際コンクールで優勝・入賞の実績を持つ。合唱は国立音楽大学

   (NHK今週の番組より)



   [放送日程]

    12月23日(日)FM・午後2:00〜6:00 (特集「サンデークラシックワイド」内)

    12月31日(月)BS2・午後4:30〜6:00

    12月31日(月)教育・午後8:00〜9:30


    この後、31日にも再放送が予定されている。私にはバリトンキム・テヒョンが特に印象にのこった。国立音楽大学の学生による合唱も素晴らしい。31日も逃さずに聞こうと思っている。

   この曲を聴きながら、私は芸術というものをあれこれと考えていた。そのことはまたいずれ記録しておきたい。



><

><

><

  ><

-->