池田重利公の御歌
七十五 うきかたにおもひしれともいつはりの
ありのすさみそなきにまされる
訳=この世は期待したとおりには行かないものだとよく知っておりますから根拠のないことでもあるが当然と考えて生きておりますが、それさえもないよりはマシと言うモノでありましょう。
註=ありのすさみー(有りのすさび)―存在することが当然と思うほどなれてしまい、なんともおもわないこと。
七十六 忘るるやこの世なからに身をかへし
人かとみるにおもかはりせす
訳=(日頃出会わないためにもうすっかり忘れてしまった人と突然出会ったときの感慨)忘れてしまった人が現実に眼前に出合い、ああ、あの人だと思った瞬間その人が昔とちっとも顔つきがちっとも変わっていなかったという驚きの感慨。(勿論この反対の時の方が一般的ではあろう。)
註=おもがはりー(面変わり)―顔つきが変わること、また様子が変わること。